ウツギの日々趣味日記

ゲーム・アニメ・音楽・読書など。趣味のことをつらつらと。

【ネタバレ有】「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」レビュー

 漫画「ハイキュー!!」をご存知でしょうか。試合描写がめちゃくちゃ良いバレーボール漫画です。

日向と影山の邂逅からメンバー集結、大会まで・・・物語を楽しみながら徐々にバレーボールというスポーツの魅力に迫っていくという構成になっており、「スポーツ漫画ならスポーツで魅せろよ」派の私にとってドストライクな作品でした。

特に最高なのが試合描写。スポーツにとって一番大切な試合の部分が本当に面白い。一通り読んだ後にリアル試合の中継とか見ると、なんとなく何やってるか分かるしなんなら面白いんですよね。

そして高校部活としてのバレーボールが、そこだけ断絶して存在している単なる思い出ではなく、続ける人にとっても辞める人にとってもその人の一部として何らかの形で生き続けるという一貫したテーマがたまらなく好きでした。

haikyu.jp

で。その続編アニメ化が劇場版、しかもあの「ゴミ捨て場の決戦」!ということで、週末の気力を振り絞り這う這うの体で映画館に行ってまいりました!イマキンニクツウデスシヌ

でも無茶した甲斐があった。めっちゃ良かったです・・・。

ということで感想です。内容の説明はアニメや原作の内容知ってる前提で飛ばします。原作の良さを生かし切れていたか、魅力があるアニメ―ションだったか、映画としてはどうだったかを軸に話します。

※原作の内容はもちろんの事、どこまで映画化したのか、表現方法について若干のネタバレを含みます。これから見に行く予定のある人はご注意ください。

 

良かったところ

信頼と実績の「いつもの」ハイキューアニメ

感触としてはいつものハイキューアニメでした。劇場版だからと言って作画の方法に大きな変化も無かったし音も演出もいつも通り。

しかしあの力がほぼ常時100%発揮されていると考えたらどうでしょう。TO THE TOPの時に若干覚えた違和感は本作にはありませんでした(明らかに万全じゃないのに違和感程度に抑えたのがすごいんだけどねこの件については…)意図的に崩したような場面はあったものの、演出の範疇でしょう。

そしてただテレビシリーズで展開していたそのままのハイキューを上映しても劇場での臨場感が保証されることは一度見た事のある方ならなんとなく分かると思います。マジであのまんまのテイストを、100の出力を以って続編劇場版でやってのけた。

それとこれ画面が大きいので私の気の所為かもしれないんですが、シューズの音や足回りの動きがめっちゃ良くて気持ちが良かったです。正直これだけで元は取れた気分。

映画を見た後は、なんだか一つの試合を見終わった後の変な高揚感がありました。安心してください、今までのハイキューアニメが好きだったら絶対に損しません。

構成とコンテの連動が最高

一方、いつもと違うと感じたのは、アングルへのこだわりがいつも以上だった事。ハイキューではコート内の様子を俯瞰して見られるように作画のアングルとしてかなり面倒な事をやっているのですが、今回は更に面倒なことをやっています。レンズいくつ用意したんですかというカメラを駆使しつつ、同じ場面を違うアングルで描く事で話に立体感を持たせるようなことをしていました。
「こういう話だからこういうアニメ演出として構成する、こういうコンテにする」というのはテレビシリーズでも散見されましたが、今回の劇場版はそれがかなりいい形で発揮されたと私は感じました。記号的な台詞や表情だけで終わらせない心情描写が試合の臨場感を引き立てていました。

「ライバル」と「成長」をテーマにした思い切った構成が良

ここまでアングルにこだわっているのは、今回、ライバル関係を軸においているからでしょう。この試合は4巻強(いや5巻分に近い…?)にわたる長丁場で、軸がブレれば瓦解するような綱渡りの脚本だったはずです。
それをライバル関係と最初の音駒戦との違い(成長)に焦点を置いて削るところは削り貫徹させた…(*1)。一つの場面に複数の視点を持たせ立体感を持たせようとしているのが印象的でした。

特に日向と研磨の思考の過程は丁寧に追っていた印象です。序盤からじりじりと追い込んでいく研磨の策士っぷり、その策を打ち破る日向、終盤のギリギリの戦いが本当に丁寧に描かれていました。最終盤の研磨視点の試合展開も、疲労の中で必死にボールを追う様子を上手く表現していてぐっときました。終わりたくない気持ちが痛いほど伝わってきました・・・。

で、その戦いがある意味「あっさりと」幕切れになるんですよ・・・。私も日向と同じように「え?終わったの?」って感覚で最後いました(内容全部知ってるのにな)。そこまでの流れの作り方がもう完璧でした・・・。試合後の握手では涙をこらえきれませんでした・・・。

ハードな試合で疲弊していく様子も音の取捨選択やディレクションの部分で相当こだわったなと感じました。この劇場版の完成度、やろうと思ってできる表現ではない。何クールも丁寧に積み上げてきた経験の集成がここにあると感じました。

気になるところ

思い入れありきの作品

私はこの劇場版は素晴らしい出来だと思いますが、ハイキュー完全初見の人に勧めたいかというと微妙なところです。これだけ回想を詰め込んでも、音駒との因縁を語りきれたとは言えません。音駒戦に繋がる出会いの場面や、最低限の選手の説明はあったのですがそれでも足りたかどうか・・・。

連載形式に合わせ、丁寧にエピソードを積み上げてきた原作の構成力が劇場版ではかえって足かせになっています。やはり、テレビシリーズとして続けていく方が作品の魅力は生かしきれるのではと思いました。ここら辺は完全初見の人の感想を待ちたいですね。

もちろん、原作やアニメへの導線として考えれば悪くはないです。試合の部分は完全初見でも楽しめるはず。(なんかずっと試合の事褒めてるな私)

もっと試合を見たかった

回想が多い。わりとダイジェストで流し気味にされた得点場面もあり、若干テンポが落ちていたので、もう少し回想を早く終わらせて試合場面が多かったら良かったなと思いました。
ただしこれは構成上非常に悩ましいところではあります。確かに外せない回想ではある・・・。この試合における重要な場面は入っているのでひとまずはそれでよしとしたい・・・。ただでさえ無茶振りみたいな劇場版だし・・・

最後の光来登場は蛇足感も

スタッフロールの後にあったから次回予告的にも感じられましたが、賛否わかれるかも。私としては若干萎えました。
どうしても見せたいなら綺麗に音駒戦だけで次戦の話はシルエット程度でも良かった。「やってくれるの!?」という喜びはあったし、続き物の「引き」としては良かったかもしれませんが、1本の作品として見るならば、スタッフロール後の話は試合の余韻をかき消すような話でちょっと微妙でした。

総評   

続き物としての意識を強く感じた映画化ではありましたが、試合を見終わったかのような高揚感と感動があり、いつものハイキューアニメの持ち味が最大限スクリーンで輝いていた良い映画でした。

この試合を1本の映画に収めきり、且つ魅力ある作品に仕上げていただいたスタッフ・キャストの皆様には感謝しかありません。良い劇場版をありがとうございました・・・!

どうかテレビシリーズで続きを・・・!待ってます。

おまけ・パンフレットや無料冊子について

映画館ではグッズなども販売していましたが激混みだったのでパンフだけ買って退散しました。そしてシアター内に入る前には右の冊子もいただきました。

パンフレット

久しぶりにパンフレット購入したのですがとても良い内容でした。キャラ紹介、スターティングメンバー紹介、これまでのお話・・・。キャストのコメントやメインキャスト(*2)のインタビューはもちろんの事!

今回劇場版に際し戻ってきた1期~3期の監督をはじめスタッフのインタビューが載ってました。楽屋裏的なお話が大好きな身としてはとても面白い内容でした。具体的には、

  • 監督・脚本:満仲勧氏
  • 音響監督:菊田浩巳氏
  • キーアニメーター:髙橋英樹氏
  • 色彩設計:佐藤真由美氏
  • 美術監督:立田一郎氏

のお話が載っています。この映画の表現は誰か一人欠けても成しえなかった表現でしょう。

あと雑誌でもちょくちょく見かけますが、バレーボール選手のコメントも載ってます。石川祐希選手と髙橋藍選手のコメントが載っていました。

今回、劇場版に際しコラボがえげつない数ですがプロの選手まで引っ張ってきて雑誌やパンフに載せてくるなんて宣伝気合入りまくってますね・・・!

無料冊子

また、映画館に入る際は無料冊子も配られます。最近多いですねえ。無料冊子は「33.5巻」と銘打ちまして、126ページとなかなか肉厚な内容になってます。具体的には、

  • 古舘先生からの1ページメッセージ:シンプルですき。
  • 登場する選手の紹介と共に古舘先生のラクガキと称した1ページの描きおろしおまけ漫画:練習中の様子とか休憩中の一枚絵とかあれこれ。
  • 古舘先生への質問コーナー:キャラへの質問回答が全部面白かったしちょい意外な回答もあった。
  • 試合後の様子が描かれたプチ漫画(番外編):こっちは清書してるがっちりした漫画で、試合後の話になりますので劇場版を見終わった後に読むのがベストです。(追記:番外編は週刊少年ジャンプ2024年10号にも掲載されてます)

って感じでした。

あえて原作を読まないできたとか、昔読んだけど曖昧な状態でもう一度見たいとか(私の事)、この日の為にアニメの初期音駒戦見直してきたとか(私の事)、完全アニメで追ってる・・・

という流れ重視派の皆様におかれましては、109ページ以降は後で読む事を強くお勧めします。後ろのページをテキトーに開いたらいきなりダメージ食らって死ぬぞ。

 

音駒戦が載っている巻

 

ハイキュー!!magazine

(2月18日追記)スポーツ雑誌に見立てたハイキューの登場人物のその後を描いたガイドブック。出てるのに昨日気付いて、今日内容確認。良かったので載せときます。こっちは原作全部読んだ後の方が良いかな。

 

(2024.02.20 配布特典の漫画について追記した上でネタバレと強調しました。いやほんと映画見終わった後の余韻に浸ってる時に読むのが最高…。)

*1:※漫画と構成上大きな変化はなし、ダイジェストで繋げた感じ

*2:烏野側のキャスト:日向(村瀬歩さん)と影山(石川界人さん)、音駒側:研磨(梶裕貴さん)とクロ(中村悠一さん)のキャスト