ウツギの日々趣味日記

ゲーム・アニメ・音楽・読書など。趣味のことをつらつらと。

今日の読書 #24 「フットボールの社会史」(岩波書店)

今日の読書は「フットボールの社会史」。フットボールを社会史の視点から書いた珍しい一冊です。

 

 図書館にたまたま置いてあって、知人がサッカー好きだからというだけで話の種に手に取った一冊。昨今の情勢を思い、どうしてもここに立ち返りたいと思い再読しました。

 本書は、フットボールと社会の関係を書いた本です。フットボール前史と言っても良いでしょう。

 近代になり今のサッカーやラグビーの形になる以前から親しまれていたボール蹴り遊び。仕事も学業も投げ出して球蹴り、時に「街中で遊ぶな」と禁止令まで出される始末。

 このようなただの(そして乱暴な)球蹴り遊びだったものに、一定の評価がつき、ルールが敷かれ、地域を飛び越えた共通言語になっていく過程は実に刺激的です。そうしたフットボールと社会の関係が確立される以前の躍動が、多数の引用を用いて生き生きと語られます。

 もしこのゲームがただ「球蹴り遊び」で止まっていたら、世界中の人々がサッカーやラグビーで熱狂する事は無かったでしょう。そのことは、本書で描かれているような乱暴な遊び方が現在でもある事をみても一目瞭然です。

 フットボールそれ自体はただの遊びのルールであり、勝敗であり、人間の身体活動をより面白いものにするための道具でしかありません。関わる人間、扱われ方、社会の印象やルールのありようでどのようにも変化するのです。この本はその事を思い出させてくれます。

 しかし現代社会での取り扱われようを見ていると、このスポーツに限らず様々なスポーツが過剰に賛美され、「単なる遊びのルール」であることが忘れ去られているのではないかとさえ思います。

 依怙贔屓や不正で試合をつまらなくするのも人間。ルールを正しく運用するのも、素晴らしい駆け引きや技術によって試合を面白くするのも人間です。スポーツという、様々な人間の手を経て改良されてきた素晴らしいゲームが、また人間の手によってつまらないものに逆行していく事がなければと思います。

スポーツと社会の関係を考える上でも読みたい一冊です。

フットボールの社会史 (岩波新書 黄版 312)

フットボールの社会史 (岩波新書 黄版 312)