ウツギの日々趣味日記

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今日の読書 #22 「はみだし学芸員のNY留学―美術館からの脱出」(ぺりかん社)

今日の読書は「はみだし学芸員のNY留学―美術館からの脱出」。数年前に読んで、最近読み返した一冊を紹介です。

 

 

本書は、一度は学芸員として美術館で働き始めたものの日本の美術館の在り方に疑問を持った著者が、ニューヨークに留学した体験記。

前半は当時の美術館の内情が赤裸々に語られています。予算不足、人員不足、業務のブラックボックス化。学芸員と他業務に携わるスタッフの軋轢など、学芸員に限らず様々な業種で聞かれる問題が凝縮されたような内容です。

学芸員の方の話を聞いていると、「雑芸員」などという自虐言葉を良く聞くのですが、あまりにも業務が多岐に渡り、学芸員としての仕事に時間を費やせない嘆きを良く表した言葉でしょう。本書に書かれている内容はまさにそれで、何度読んでも胸が痛くなります。

後半はニューヨークへの留学経験と、留学経験を通じて得たアメリカの美術館運営の知識について書かれています。著者の少し美化の入ったアメリカ観も見え、内容もそこまで濃くはありませんが、美術館運営を考えるにあたって参考になる内容です。

 

本書の刊行が2002年。2010年代前半にちょっとだけ日本の美術館の内情を知る機会があったのですが、人員不足の問題などほとんど解決していないという印象でした。

いま、2020年。いまだ「学芸員はなんでもやるものだ」という声を聞きます。本当にそうなのでしょうか。私たちに新しい知識やものの見方を教えてくれる学芸員の待遇が、より良いものになる事を願ってやみません。

 

学芸員を目指している方、美術好きの方はもちろんの事、運営に関わる方にも一度読んで欲しい一冊です。

 

はみだし学芸員のNY(ニューヨーク)留学―美術館からの脱出

はみだし学芸員のNY(ニューヨーク)留学―美術館からの脱出

  • 作者:藤森 一好
  • 出版社/メーカー: ぺりかん社
  • 発売日: 2002/12
  • メディア: 単行本