ウツギの日々趣味日記

ゲーム・アニメ・音楽・読書など。趣味のことをつらつらと。

「スキップとローファー」最新42話感想・志摩君の気持ちを考える

 

 

ふだん漫画の感想を書かない私ですが、
どうしても我慢できなかった。

私なりの解釈をつらつら書きました。どうぞ。

志摩君のリアリティ

まず、大前提のお話を書こう。スキップとローファーの二人目の主人公・志摩君は、いるところにはいる「イケメン」だ。現に、私は似たような感じの人物に会った事がある。人との距離感や話し方がすごく似ていたし、怒った時の雰囲気も似ているのだ(顔には出ないところとか特に)。そんでもって私は人間関係がとてつもなく苦手なので、いつも彼のような人物に気を遣われるのである。つらい。

だからか私はこの漫画を読むとき、しばし古傷を抉られるような気分になる。不可解な言動で困らせたり、気を遣われて申し訳なさで頭がいっぱいになったあの時を1コマ1コマ読んでは思い出し頭を抱える。

しかも、接している時もおぼろげに感じていた彼なりの苦悩みたいなものを、この漫画でははっきりと突き付けられるのである。更につらい。

しかしこの「どこかにいそうな」、等身大の人物としての苦悩や葛藤こそがこの漫画の魅力であり、メインキャラの一角たる彼はこの漫画の特長を体現したような人物である。私はそんな志摩君に幸せになって欲しいと切に願っている。

しかしこの「幸せ」には多数の困難が待ち構えている・・・。

私が今回感想を書きたくて我慢できなかった理由がそこにある。41話と42話は、志摩君の弱点を大刀で力任せにぶん殴るような展開だったのだ。

器用な不器用

志摩君は優しいというより、自分の感受性の高さに振り回されるタイプの人物だ。

周囲にとって囁き声程度の感情が、全部絶叫くらいの勢いで聴こえてくる。幼少期、母親の感情に寄り添っていなければならなかったという生い立ちのせいもあるだろう。当人としては優しいつもりなど毛頭なく、ただ悪い状況を無視できるほど意思が強くなかっただけなのである。

が、あまりにもスマートな対応をするのでそういう風にはとられず、「良く周りが見えていて気が利く」と評価されがちなのが、志摩君のようなタイプだ。って言うか実際そうなのだが、自己認識としてそうはならんのがこのタイプの難儀なところだ。

それが結果として人気や人望を生んでいるのだが、彼がもうちょっと自分の感情に忠実になっていたら、もう少し息のしやすい状況が作れていたはずである。なのに、変な気遣いからわざわざ息苦しい選択をしたり、ついちょっとした嘘をついてしまう・・・。志摩君は器用な不器用さんなのである。

一番の問題は、生まれてこの方周りの感情にアンテナを張りすぎているせいで、自分の意思や感情が良く分からなくなってしまっている、ということだろうか。この、本気出せば上手くやれそうなのに自分の意思が固まっていないせいでそうはならない歯痒さが彼の弱点であり、かわいいところでもある。

幸いなのは、周囲の友人はそのへん把握していて、フォローしてくれそうなことだろうか。

で。

「初めての女友達」

そんな志摩君に変化を齎したのが本作の一人目の主人公、みつみちゃんである。突飛な行動で一話からおもしれー女として志摩くんの興味の対象になった彼女は、持ち前の面白キャラと優しさ、そしてひたむきな姿で志摩君の心を解きほぐしていった。

その変化が最も良く現れているのは1年の文化祭における劇だろう。彼の弱点をはっきりと描写した一幕でもあったが、一方でその事を自覚し、自分の感情を探しに行く一歩を踏み出した。そしてその成果あってか、2年になってからはちょっとずつ感情を口にするようになり始めたのだった。

しかし。志摩君の変化にほっこりする私をよそに、1話から丁寧に丁寧に描写されてきた時限爆弾がついに爆発することになったのである。

安全基地としてのみつみちゃん

みつみちゃんとの出会いで自分の中にある様々な感情を自覚する事になる志摩君であるが、みつみちゃんへの感情には共通しているイメージがある。それは「純粋」だとか「無垢」だとか、「子どもっぽい」だとかいった、葛藤や苦悩、恋愛なんかとは対極にあるものだ。

描写は1巻1話しょっぱなから容赦ない。みつみちゃんは初めての東京に降り立つ「雛鳥」として何度か描かれ、文化祭の準備中には志摩君の幼少期と重ねられて「まだ小さな子どもみたいに」「そのまんま変わらないでいてくれないかな」という描写までされている。その後に「みつみちゃんはみつみちゃんだ」と台詞が入るが、子どものイメージの否定までには至っていない。

更に志摩くんはみつみちゃんを、自分にとっての安全基地として扱っている節さえあった。彼はみつみちゃんに対してしばしば自分の無自覚な感情をぶつけることがある。普段は察しが良いのに、動物園に2人でいかないかと誘われた時は即決。あまりのにぶにぶさにみつみちゃんさえ困惑させてしまう有様である。40話にいたっては「みつみちゃんって好きな人いたんだ!?」等と言っているからもうどうしようもない。

そして極めつけがこれ。6巻32話。

「ねぇみつみちゃん オレ最近まで早く大人になりたいって思ってたけどさ」
「やっぱゆっくりなろうよ」

志摩君は緩やかな変化を望んでいて、その時傍らにいて変わらないものとしてみつみちゃんを望んでいるのではないだろうか・・・。

しかし、みつみちゃんは、こどもっぽいなりに色々悩んだり、学んだりしながら成長している一人の人間だ。決して無垢なわけではなく、ふみちゃんを通して恋愛の話も聞いているし、人の言葉に怒ったり、悩んだりしているのだ。特にいま、恋愛に関しては初恋というイベントによって急速に成長しているといってもいい。

そして41話だ。

志摩くんは突然、みつみちゃんも周りと同じように誰かを好きになる女の子だと言うことを突きつけられるのである。

志摩くんはあのとき何を思ったのだろうか。とにかく困惑したのは間違いない。そして、今自分が選択を誤れば安全基地を失うと焦ったに違いないだろう(自覚があるかはさておき・・・)。

彼に気づかなかった振りをするという選択肢はない。しかし受け入れたら、綺麗にとっておきたかったものを自ら穢すことになる(クリスマスの時に、プレゼントで感情を独占したがる自分を利己的と考えるあたり志摩くんは恋愛感情をそう分類していそう)。友情より不安定な関係にもなる。

辛い。この展開で付き合う事になったらどうあがいてもどこかでこのすれ違いが問題になるじゃないか。なんならこの漫画は別れるエンドもありうる。そういうリアリティを避けない漫画だ。どうすんだこの先・・・と思っていたら一か月休載。

私は悶々とした日々を過ごしていた・・・。

そして最新42話、予想通り志摩君、激しく動揺していらっしゃる・・・。

この話、「友達だと思ってたのに・・・」なんて単純な話ではない。「みつみちゃんはそんな話(変化)と無縁だと思っていたのに、よりによって自分がその話を始めてしまうのか」というちょっとした絶望と、変化していく物事への恐れも志摩君にはあっただろう。でなきゃ幼少期の回想まで出てこない。これから本格的にいろんなことと向き合わなきゃいけない展開だよ。吐きそう。

友情との対比描写

更に直前にはゆづ&まこっちゃんの話があった。5話「バチバチの映画館」からついにここまでの仲になったのかとおもうと感慨深いものがあった。「スキップとローファー」は恋愛に偏重せず、しっかり友情も描いてくれる作品で好きだ。

しかしだからこそ、1年かけて育まれたこの美しい友情の後に、1年かけて育んできた爆弾をぶつけられ、対比で吐きそうである。

この二人はゆづまこのようにはならぬのだ。そう突き付けられているようでつらい。

今後の展開予想

とにかく自分自身の感情ととことん向き合う事になるのは間違いないだろう。が、いつまでも進展せずにみつみちゃんが焦れるか、せっかく付き合う事になったのに志摩君がうれしそうじゃないのを気にする展開になるか…この先はわからない。

それでこの漫画なら、絶対に一対一の話で終わらせないだろう。どう展開していくのだろう、先が怖い・・・。

 

 

(2022.06.25 説明足りないと思ったので追加しました)