私は忘れっぽい人間です。
アニメを見るのが好きで、暇を見てはバンダイチャンネルで見放題のアニメを見漁ったり、レンタルショップでまとめて借りて見たりするのですが、見たそばから見たそばから忘れる。
「面白かった」というふわっとした情報は残っているものの、数ヶ月もすれば頭から消え失せています。好きな話数、台詞、当然覚えていません。大雑把な内容が思い出せるならまだ良い方で、見たことさえ忘れている作品もあります。よく名作に対する賞賛の言葉として「記憶を全部消してもう一度出会いたい」なんてものがありますけど、よく覚えてられるなあと思うくらいです。
最近では見た作品の総数も相俟って、忘れる弊害も凄まじくなってきました。せっかく見たのに、なんだかもったいない。
というわけで、せっかくブログもあることですし、備忘録も兼ねて今まで見てきたアニメの感想を書いていこうと思います。題して「私のアニメ見聞録」。
メジャーなタイトルからマイナーなあのタイトルまで。思いついた時に好きな作品を紹介していけたらと思っています。どうぞお付き合いください。
「WOLF'S RAIN」
1回目となる今回は「WOLF'S RAIN」。2003年に放送されたオリジナルアニメ作品です。
私自身はバンダイチャンネルで初めて視聴。全30話、製作者側の都合で15~18話は総集編。未完結のまま放送は終了し、ラスト27~30話はテレビ未放映です。だからある意味、幸福な出会いだったのかもしれません。1話から最後まで丸一日かけて、のめりこむように見ました。
狼が駆けるスタイリッシュなオープニングから始まり、菅野よう子さんの手がける音楽、脈動する動物達のアニメーション。最初に見た時の衝撃は今でもよく覚えています。ストーリー中にあまりにベタな動物観が垣間見えるのは少し残念でしたが、アニメの魅力はなんだと聞かれたら、真っ先に挙げるくらいには好きな作品です。
狼と人、生と死の狭間
なんといってもこの作品の特徴は「狼」。動物が主役の珍しい作品です。とは言っても単なる狼とは違い人間に「化ける」狼で、狼なのに人間社会に紛れて暮らしていたりと、事情は複雑です。
彼らは実に幻想的な存在で、人の姿と狼の姿を入れ替わりながら話は進みます。人としての個性に気をとられていると「狼」として行動にはぎょっとする事もあり、「人間だと思ってたけど、こいつら狼なんだよな」という、その狼と人とのバランスが絶妙です。
そしてこの作品、けっこう生き物が死にます。それも力加減を間違えたとか、足を滑らせて転んだとか、本当にちょっとした「物のはずみ」であることもしばしば。あまりにもあっさりと訪れる「死」はグロテスクに描かれるよりも痛々しく、心抉られます。
一方で、たとえ生きていたとしても、理想的に生きていけるとは限らない。生き辛い世界で理想と現実に揺れながら、なんとか「生」にしがみついている者達の姿も描かれます。
それだけに、主人公達の行動は胸にきます。あっけなく「死」が訪れる世界だからこそ、こう生きたいと願い、どう進んでいくか悩む。「狼」達や登場人物の葛藤も魅力の一つです。
作品を支える確かな「生」の描写 力強く愛おしい生き物達
「狼」が主人公のこの作品。他にもとにかく沢山の生き物が登場し、物語を彩ります。
特にこだわりを感じられるのが主人公である「狼」達の動きで、耳がピクピク動いたり、顎を撫でられて気持ち良さそうにしたりと、1つ1つが愛おしい。狼の個性を描き分け、表情の動きまでもじっくり見せるアニメはそうありません。
一方で警戒して身構えたり、勢いよく飛び掛ったりと、狼の力強い一面もしっかり描写してきます。狼が大好き!という人は、それだけで一見の価値ありです。
もちろん、人間の動きにも手抜きはありません。細かな表情の動きや、動作一つ一つ、人間の持つ色気をたっぷり描写してきます。独特の世界観と様々な人間模様を描くこのアニメの土台は、この丁寧な描写が支えている、と言っても過言ではありません。
「楽園」とは何か?退廃的な世界観と儚く美しい物語
主人公の狼が人間になれるというだけでも不思議なのに、彼らを取り囲む世界はもっと不思議です。
近未来を思わせる街並みに、謎の研究施設。「花の娘」ってなに?キバが幾度も口にする「楽園」とは?様々な要素が絡み合い、"狼がどうして人間社会に紛れて暮らしていたのか"というそもそもの疑問へと、物語は向かっていきます。
退廃的な雰囲気漂う世界で、謎の散りばめられた台詞の数々も魅力的でした。
こういう作品は途中で急に趣向が変わってしまう事も多いのですが、最後まで一貫したテーマを持ち、完結させた点も評価したいです。
好きな話とキャラクター
この作品については、テーマ性の強い長編アニメと言う事もあって、特定の話数やキャラクターについて語るのは無粋かな、と言うのが本音。1話から通しで見たい作品です。
それでもあえて好きな話とキャラクターを挙げるのであれば、ブルーに関するエピソードでしょうか。
「疑惑」から始まるブルーの物語
チェザと出会う9話、狼の血に目覚め合流する12話。それでも主人・クエントの存在を忘れられず、飼い犬と狼との間で悩む。この作品はそういったある意味ベタで、型に嵌った関係性が沢山描かれます。ちょっとクドいくらい。
それでも卑俗な表現になりきらないのは、結局そこで出てくる物語がその場限りの思いつきではなく、1つのテーマを持った物語としてどんどん変遷していくからなのでしょう。
この作品は世界観やテーマの表現はもちろん、これだけキャラクターを出しておいて同時進行できる構成の技量も素晴らしいと思います。バラバラに展開させたら楽そうなものを、それをふとしたところで会わせて、仲良くさせて、一緒に旅までさせて。良くやりますよこんなん。
ブルーはそんな「群像劇」の一面を持つこの作品の中でも、とりわけ好みの物語です。どこにいてもお互いを忘れない、その切なくも美しいペットと飼い主の関係が好きでした。
最後に
いかがだったでしょうか。楽園の正体は貴方の目で――なんて皆書いていそうな文言ですけど、本当にこの作品は見た後に色々夢想してしまう作品です。
童話的、あるいは神話的な世界観が好きな人なら、1話見てみるだけでも損はないはず。この記事を見て興味を持った方は、是非何かの機会に視聴してみて欲しいです。
- アーティスト: 菅野よう子,Ilaria Graziano,Franco Sansalone,坂本真綾,Steve Conte,Gabriela Robin,クリス・モスデル,TIM JENSEN,岩里祐穂
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: CD
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