ふと思い立って読書コーナーを設けてみることにしました。その名も「今日の読書」。自分が読んできた本の中から、好きな本を不定期かつ気まぐれに紹介していきたいと思います。
記念すべき第1回は創元社から出版されている「色彩 ―色材の文化史」。きたる11月1日、国立科学博物館にて特別展「世界遺産 ラスコー展」が始まります。この特別展では洞窟に残されていた画材や道具が世界で初公開されるとかで、絵の具の歴史についてちょっと調べたことのある私は大興奮!本書を手にとって復習していました。
顔料や染料など色材に関する歴史がまとめられた本で、著者はフランソワ・ドラマールとベルナール・ギノー。本書はその翻訳です。監修は近代デザイン史について多くの著書を手がけている柏木博、翻訳はヘレンハルメ美穂。
日本には『いつの時代にどんな絵の具が使われていたのか』といったテーマの著書が少なく、探そうとすると各種研究機関のホームページに掲載されている論文や、企業の紹介サイトに行き当たることがほとんど。個別の作品に関して染料や顔料に関する言及はあるものの、時代を概観できる本はあまり多くはありません。
その中でも本書は、日本で入手できる本としては非常に良くまとまっていて、おおまかな色材の歴史を追うことができます。先史時代の洞窟壁画や衣服の染色の話から始まり、中世の危険を伴いながらの色材開発、近代以降の化学工業の隆盛など――いつの時代にどんな材料を使っていて、それはどこから取ってきたのか。どんな方法で色材を作り出し、世の中にどう流通していたのかが分かります。けっこう政治や経済にも絡んでいて、インディゴ貿易など、社会と色材の意外な関わりに気付かされる本です。
素晴らしい作品を前に、私達はつい芸術家が自由に色を扱っていたように錯覚してしまいます。けれど、理想の色を生み出すのに非常に多くの人が携わり、大変な苦労をしてきました。その試行錯誤を知り、普段何気なく見ている身の周りの「色」について違った視点を持つきっかけになる良書です。美術好きのみならず、身の周りの「色を塗る道具」に関心のある人にも、ぜひ読んで欲しい一冊です。
- 作者: フランソワドラマール,ベルナールギノー,柏木博,Francois Delamare,Bernard Guineau,ヘレンハルメ美穂
- 出版社/メーカー: 創元社
- 発売日: 2007/02
- メディア: 単行本
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